こんばんは。
先日よりセラミックベアリングの優位性などに関してお問い合わせが急増した為、当店の見解をご説明いたします。
X(旧Twitter)で簡単にポストしようと思ったのですが、私は簡潔にまとめるのが苦手で少し長くなってしまったのでブログにしました。
内容としては、有名ブロガーさんの記事でスチールベアリングとセラミックベアリングの回転抵抗の差は0.03Wしか無いらしい、との事でARPホイールのオプションに設定しているセラミックベアリングや鬼ベアリングは本当に効果があるのか、といった主旨のお問い合わせになります。
まず前提として、当店としてもスチール球やセラミック球など素材自体では有意な差は無さそうというのは同意見です。
その上で当店で取り扱っているセラミックベアリングについては、
・脚を止めた際のスピードの減衰が緩やかになる
・下りのトップスピードが上がる
・トップスピードに到達するまでの時間が短くなる
といった効果が確認できており、鬼ベアリングについては上記の効果が更に大幅に向上します。
これについては単純に球をセラミックに変更した事によって得られるワケではなく、セラミック球は目的というより手段という感じです。
ロードバイクのホイールに使用されてるベアリングは非接触シールが主なので取り敢えずシールはいいとして、他にベアリングの回転抵抗になる大きな要因としては潤滑剤(グリス)がウェイトを占めます。
なので、もしグリスが無い状態で使用できれば回転抵抗をめっちゃ低くできるよね。という話です。
しかし、スチールベアリング(スチール球とスチールレース)をグリスの無い状態で使用すると、回転と共に熱膨張し、焼き付きが発生したり、内部クリアランスが無くなり素材にダメージが入るリスクが出てきます。
それなら球をセラミックに変更すれば(理屈では)回転抵抗も下げられるし、球の焼き付きも無くなって良さそうだよね、というのが一般的なセラミックベアリングの発想ですが、これだけだと硬いセラミック球がスチールのレースを削ってしまうので、結局グリスで潤滑してやる必要があります。
それでは意味がないので、CULTベアリングや一部のセラミックベアリングでは、高周波焼き入れ等でレースの硬度を上げてセラミック球に耐えられる様に対策をする事で、(ロードバイク程度の負荷なら)グリス無しでの運用を実現しています。(定期的にオイルを差す必要はあります。)
現在ARPホイールのオプションにあるセラミックベアリングもこれに該当します。
それと、お問い合わせ頂いた記事内ではBBでの比較の様ですが、BBのベアリングはクランクの回転に依存しますので、当然脚を止めている時は回転しません。
対してホイールのベアリングは脚を止めても回転し続けますので、当店ではホイールのベアリングの影響というのはBBのベアリングよりも非常に大きいという見解です。
そして鬼ベアリングついて、鬼ベアリングはセラミック球とステンレスレースの組み合わせですが、それに加えJTEKTさんが鬼ベアリングの為に独自開発された「潤滑剤が回転抵抗に影響しない注油機構」を備えている為、圧倒的な回転抵抗の低さと耐久性を実現しているワケです。
(走行距離などを保証するモノではありませんが例として)プロレースで1シーズンノーメンテで使用しても、10万km相当の走行テスト後でも、回転性能が変わらないというデータもあるそうです。
鬼ベアリングについては下記の動画で、開発の方が解説されていますのでご確認頂ければと思います。
まとめると、重要なのは材質の違いではなくグリスの有無や設計の部分だよ。という話です。
これについては以前まだ私自身もセラミックベアリングや鬼ベアリングについて懐疑的だった時に撮影した下記の動画内でも解説しています。
行き当たりばったりで撮影してしまったのでダラダラと喋ってしまっていますが、随所でポイントになる事を話していますのでスキップなどはせずに再生速度を上げるなどして、是非ご視聴頂けると嬉しいです。
現在では実走でのテストは完了しており、ARPホイールに採用しているセラミックベアリングや鬼ベアリングの優位性については確実な効果を確認しています。
しかし、データなどで単純比較するには走行コンディションの違い等によるノイズが多く、上手い事まとめられなかった為、動画にはできておりませんでした。
これについては、いずれ時間を取って、同日中にベアリング3種の比較実験を行いたいと考えています。
余談ですが、お問い合わせ頂いた記事の影響か、SNS上ではユーザーもホイールを提供する側の方もベアリングはスチールで十分という意見を多数お見掛けしました。
そういった流れは、実際のベアリングの性能が誤解されている事に歯痒さを感じる部分も勿論ありますが、もし他メーカーがスチールベアリングしか使用しない状況になれば、セラミックベアリングや鬼ベアリングを使用されているARPホイールユーザーは大きなアドバンテージを得られる為、当店としてはめちゃめちゃウェルカムな状況というのも正直なところです。