こんばんは。
マドン9のフィッティングを行いました。
こちらのお客様は身長の割りには大きいフレームと長いクランクを使用されておりまして、色々とお話を聞く限りではポジションがあまり合っていないのでは無いかという事でご来店頂きました。
大きいフレームと長いクランクというのは具体的には、身長173cmに対してフレームサイズ54、クランク長172.5mmです。
トレックを専門的に扱っているショップのバイクフ○ラス(半濁点が大きくなっちゃった)で購入する際、店員さんに身長を伝えたところサイズ54でクランク長は172.5ですね〜とキッパリと言われ、初めてのフレームで何も分からず店員さんに言われた通りのサイズで購入されたそうですが、そもそもここでサイズの選択が適性で無かったと思います。
マドン9は二種類のグレードがあり、上のグレードはかなり前傾がキツくなりますので、173cmでフレームサイズ54でも良いかとは思いますが、こちらは下のグレードの方なので、ジオメトリ的にポジションはかなりマイルドになります。
競技で使う場合(競技目的以外ではマドン9を選択する方は少ないと思いますが)、173cmで下のグレードの54というのはちょっとヘッドチューブが長過ぎて落差が出せないかもしれません。
で、その後スへ○シャライズド(また半濁点が大きくなっちゃった)でフィッティングを受けたそうなのですが、ウチでお預かりした時点ではシート高過ぎ、サドル位置前過ぎ、サドル角度上がり過ぎ、ステム長過ぎ、ハンドル位置高過ぎ、と結構とっ散らかったポジションになっていました。
スへ○シャの施工者は、このフレームサイズとクランク長での最適なポジションを出したと言っていたそうですが、ちょっと疑問が残ります。
スへ○シャのフィッティングを受けると各部の数値が記載された画像データがもらえるそうなので拝見させて頂いたのですが、ホントにこの数値合ってる?と思うような箇所があったり、なぜかハンドルバーリーチという項目が2つあったり(2つの数値は異なる)、と少し謎です。
サドル角度に関してはフィッティングをした際に、腰が前に滑り落ちてしまうので、サドルノーズを上げて滑らない様にしたそうですが、そもそも前に滑ってしまうのはサドル位置が前過ぎる事が原因だったので、サドル角度で誤魔化すのはNGです。
今回ウチでフィッティングを行ったところ、やはりフレームサイズが大きい為に合わせ切れない部分がありましたが、大分マシにはなりました。
出来ればシート高をもう少し低く(インテグラルシートポストなので取り敢えずこのまま)、サドル位置をもう少し後ろに、ステムを少し短く(少し短いステムをお持ちだそうなのでご自身で交換してみるそう)、ハンドルを低く(ヘッドチューブが長過ぎて低く出来ないので、ステムで何とかする等)したい所です。
近々クランク型のパワーメーターを導入するそうなので、クランク長も170mmに変更するそうです。
ネットなどで散見される、クランク長は身長の1/10説というのがありますが、海外のプロ選手が使用しているクランク長を身長から割り出した平均値は身長の9.7%となるそうです。
四捨五入すれば10%なので身長の1/10説はそこから生まれたのかもしれませんが、身長×9.7%で計算すると身長175cmの場合、1750mm×0.097=169.75mmなので約170mmとなり、1/10説よりも5mm程短くなります。
なのでこちらのお客様は173cmなので167.81となり、身長から算出すると167.5mmが適性という事になりますが、
これはあくまで平均値からの算出なので、その人の脚の長さや骨格や筋肉の付き方や身体の柔軟性や関節の可動域など、そこから適性クランク長は前後します。
勿論平均値ですので中にはそこから大きく外れている選手も結構いる様です。
例として
カンチェラーラは身長186cmでクランク長175mm
キンタナは身長167cmでクランク長172.5mm
というように平均値から短かったり長かったり、平均値はあくまで平均値でしかありません。
さらに脚質で別けた場合、スプリンターはやや短め、クライマーはやや長めを選択するという傾向がある様です。
勿論これも全ての選手がそうというワケではなく、あくまで傾向です。
梃子の原理が働くからクランクはなるべく長い方が良いという説があり、もちろん一理あると思いますが、闇雲に長いクランクを使えば良いというワケではありません。
高強度でケイデンス120(1秒間に2回転)とか回す頻度が多い状況(レース等)を想定した場合、適性より長過ぎるクランクは、乗り手の適性よりも常に大きな円運動を続け無ければならなくなり、無駄に身体への負担が増える事になります。
FTPより少し高い出力で走る時や、登りに差し掛かると、割とすぐに腰が痛くなるという方はクランク長が長過ぎる可能性が高いです。
梃子の原理と円運動のし易さを天秤に掛けた場合、スプリントなどケイデンスが高くなる状況にフォーカスする場合は、円運動のし易さからクランク長を短めにし、
登りなどでそもそもケイデンスはやや落ちるし、1回転に必要な出力が少しでも削減したいという場合はクランク長を長めにした方が良い、
と理論上ではそう言えると思いますし、スプリンターは短め、クライマーは長めという傾向にも沿っているかと思います。
こちらのお客様は手脚はやや長めの様に見受けられますし、身体も柔らかい方との事で、今より5mmも短いクランクを使う事に抵抗が有りそうだったので、170mmにしてみるという事になりました。
で、このクランク長ですが、身長165cmの方は160mm、160cmでは155mmが適性となりますが、シマノでもクランク長は165mmまでしかラインナップがありません。
168cmで162.96mm、167cmで161.99mmなので、適性値を四捨五入で考えると165mmのクランクが適性なのは身長168cmまでとなります。
これでは大半の女性ライダーは勿論ですが、アジア圏にはゴロゴロいらっしゃる167cm以下の男性を無視している事になります。
因みにスギノなど、もっと短いクランクをリリースしているメーカーもあります。
身長の低い方は適性よりも大きいサイズのフレームを無理矢理使用されている事が多いと思いますが、その場合乗車時の重心位置がかなり前方へズレている事が多く、バランスが取り辛く、そのせいでUターンや下りなどが苦手という方が多い様に感じます。
諸説ありますが、個人的には700Cというホイールサイズでは身長165cmくらいが限界なのでは無いかと思います。
650Cなら150cmくらいの方からポジションが出せますし、160cmくらいの方も700Cよりもちゃんとポジションが出せます。
650Cのホイールはウチで組めますし、700Cよりもスポークが短い分カッチリとさせられます。
気付いたら話が650Cにまで及んでしまいましたが、フレームサイズやクランク長が合っていてポジションが出ていると驚く程乗り易くなり、身体能力が同じ場合は乗り易い方が速く走れます。
因みに私は身長168cmでクランク長は167.5mmを使用しています。
平均値から算出するとギリ165mmがイケる程度で、むしろ162.5mmがあればそっちの方が合っているのですが、シマノクランクの165、167.5、170、172.5、175を試したところ、170以上では腰が痛くなり、165ではダンシングの際に若干リズムが取り辛かったので167.5に落ち着きました。
平均値から算出したクランク長でしたら、全然合わなくてダメって事にはならないと思いますが、その人に本当に合ったクランク長というのは実際に試してみないと分からない所ではあります。