CL50 Disc CX-Ray 組み換え

ホイール 作業日報 組み換え

こんばんは。

ROVAL CL50 Disc のスポーク交換でのお預かりです。

CL50 DiscのスポークはDTのコンペティションレースという#14の1.6mmバテッドが採用されていますが、これを軽量化とエアロ化の目的でCX-Rayに交換したいとのご要望です。

因みに上位機種のCLX50 DiscにはDTのエアロライトというCX-Rayとほぼほぼ同じくらいの比重のエアロスポークが採用されています。
ハブを作ってもらっている義理からスポークも全てDTを採用しているのですかね。

折角なので全てバラして各部の計測と計量を行います。

CL50 Disc のカタログ重量は1510gですが、こちらの個体は1509.4gとほぼカタログ値通りでした。

フロント 663.2g

  • リム 434.7g
  • ハブ 108.2g
  • スポーク 21本 99.3g
  • ニップル 21個 21g

リア 846.2g

  • リム 440.8g
  • ハブ 268.2g
  • スポーク 24本 113.2g
  • ニップル 24個 24g

といった感じです。
ニップルはアルミっぽいのですが、12mmで1個1gとかなり重めです。
ハブが前後で376.4gとヘビー級ですね。

CLX50 Disc はカタログ重量1410gと、CL50 Discより100gも軽いワケですが、リムは共通らしいので主な重量差はハブに起因しそうです。

恐らくですが、フリーボディで40-50g、セラミックベアリングや内部構造・部品などで20-30g、そしてスポークで20-30gくらいかと思われます。

今後CLXをバラす機会があれば計量したいと思います。

 

で、スポーク交換なのですが、CL50には#14のストレートプルスポークが採用されているので、汎用品のスポークが使用できるかと思ったのですが、そのままでは無理でした。


一番分かり易いのでフロント右側を例にしますが、CL50のハブフランジには溝が設けられていて


スポークの頭にはT-headと呼ばれる潰しの加工が施されています。


因みに通常のストレートプルはこんな感じのエリンギ頭です。


上から見るとこんな感じ。
左が通常のエリンギ頭、右がTヘッドです。

 

で、Tヘッドスポークで組むと


こんな感じで


ピッタリ納まるのですが


通常のエリンギ頭では


こんな感じになって使用できないワケです。

ROVALが何故わざわざスポークの頭を潰すという猟奇的な加工を施したのか、考えられるメリットとしては

  • スポークの供回りを抑制できる
  • 汎用規格品にも関わらず代替不能になり、補修の際は純正部品が高値で売れる

などが考えられます。

このスポークが供回りしないというのは、振れ取りやスポーク交換作業の際にはとても助かります。

エアロスポークなら工具で押さえればよいだけなのですが、プレーンやバテッド等の丸スポークの場合、ニップルを回そうとするとスポークも一緒に回ってしまい、調整や分解に難儀する事があります。

更に、今回のCL50の様にストレートプルで強力な緩み止めが塗布されている1.6mmの極細バテッドという構成ですと、通常なら製作者の孫の代にまで殺意を抱くレベルですが、頭潰しスポークが採用されているお陰で容易にバラせた為、無駄な殺生をせずに済みました。

純正部品の代替品が無いというのもメーカーとしてはかなり重要なポイントですね。

スバラシイです。

 

あれ…、これCX-Rayで組むの無理じゃないですか?


と思ったけど組めました。
前後で1484.6gです。


CX-Rayです。

CX-Rayのスポーク重量は合計で187.7gで、純正のコンペレースは212.5gだったので、24.8gの減量になります。

で、どうやって組んだのかと言いますと、シンプルにCX-Rayの頭をぶっ潰してやったワケです。


こんな感じで、当店ではTヘッド加工の完全再現が可能です。


純正品と比べるとこんな感じです。
左がCX-Ray、右が純正コンペレースです。


因みにリムはチューブレス対応ですが、溝の形状がイマイチでタイヤの組み合わせによってはビードを上げるのに難儀しそうです。

ディスクブレーキ用とはいえ、50/28サイズのリムで440gというのはとても優秀です。

バランス取りも行いましたが、フロント19.2g、リア15.4gと、かなりの量のウェイトを使用しました。

軽量なのは良いのですが、もう少しリムの重量バランスを考慮して製造してほしいところです。

 

しかしこのCL50 Discのハブ、設計が秀逸です。

通常、リアでいうと多段化したスプロケットの影響でDSの方がスポークアングルが立っているので、NDSのスポークテンションはDSに比べるとタルタルになってしまいガチなのですが、このCL50 DiscのハブはNDSの方がDSよりも10kgfくらいテンションが高くなります。

ディスクブレーキの場合フロントの左(ローターのある)側のスポークアングルが立つので、通常は右側の方がスポークテンションは少し緩くなるのですが、CL50 Discのハブはフロントも右側の方が10kgfくらい高くなります。

前後共にスポークテンションの左右差を近付けて行ったら、行き過ぎちゃったみたいな。

NDSがタルタルになる通常の設計では、縦剛性を抑えようとDSのテンションをそこそこにすると、NDSのスポークがほぼ仕事をしなくなります。

CLやCLXシリーズの乗り味で「硬くはない、よく分からないけれど何か速い」という不思議な感想をよく耳にしますが、もしかするとNDSのスポークテンションを上げて横剛性を稼ぎつつ、DSのスポークテンションをやや低く調整して縦剛性を少し抑える事が可能なワケで、もしかしたらそこら辺に秘密があるのかもしれません。

因みに左右差が10kgf程度だと空気圧によるセンターのズレというのもほぼ出ません。

念の為確認しましたが、案の定フロントのハブベアリングは過圧入状態でゴロゴロ言ってたので圧入し直しました。

リアはOKでした。

ROVALはこのハブベアリングの圧入具合とリムの重量バランスを改善してくれれば、完璧なホイールの1つになり得ます。